生体高分子(DNA)機能化

 DNAは明瞭な2重らせん構造を持つ生体高分子であり、その特異的な構造と多様な結合モードによりさまざまな機能分子を構造中に取り込むことが可能です。そのため、光増幅器、トランジスタ、バイオセンサーなどにおける新規機能材料の作製に利用されています。本研究室では、さまざまな機能分子をDNAと複合させることによって、下記のような新規機能材料への展開を目指しています。

DNA/ルテニウム錯体としての光電機能材料への展開

 ルテニウム錯体は、光化学・電気化学的に安定な化合物として知られており、その観点から最も広く研究されている遷移金属錯体の1つです。我々はこのルテニウム錯体をDNAと複合化させることによって、新たな光電機能材料としての展開を目指しています。

 実際にルテニウム錯体はDNAとの複合化により、そのキラル構造に起因した発光増強を示しました。さらにDNA/ルテニウム錯体を交流駆動電気化学発光素子へと展開することで、その発光デバイスとしての機能性を大幅に向上させることに成功しました。

DNAとの複合化によるルテニウム錯体の発光特性向上

DNA/ルテニウム錯体薄膜型交流駆動電気化学発光素子

1) Ultrafast Response in AC-Driven Electrochemiluminescent Cell Using Electrochemically Active DNA/Ru(bpy)32+ Hybrid Film with Mesoscopic Structures.  S.Tsuneyasu, R.Takahashi, H.Minami, K.Nakamura, N.Kobayashi, Sci. Rep., 2017, 7, 8525.

2) Photonics of DNA/ruthenium(II) complexes.  N.Kobayashi, H.Minami, K.Nakamura, Nanophotonics, 2018, 7, 1373.

DNA複合化による希土類錯体の発光特性向上

 希土類錯体とは、紫外線を吸収した有機配位子から希土類イオンへとエネルギー移動し、そこから強発光が得られる分子になります。希土類錯体の発光特性として高い色純度高い発光効率を示すことが知られています。我々はこの希土類錯体と疎水化DNAであるDNA-CTMAを複合化することで新規の光機能材料への展開を目指しています。

 本研究室では、希土類錯体の1種であるEu錯体とDNA-CTMAを複合化することで、これら2つの相互作用による発光強度の大幅な増強強度の高い円偏光発光を実現しました。

DNA-CTMA/Eu錯体複合体の発光特性向上

1) Enhanced red emissions of europium(III) chelates in DNA–CTMA complexes.  K. Nakamura, H.Minami, A.Sagara, N.Itamoto, N.kobayashi, J. Mater. Chem. C., 2018, 6, 4516.

高次配向組織化によるDNA光電機能化

 DNAは、生命情報を保存・伝達できる天然の機能性高分子として、ナノスケールの分子配線あるいは鋳型として大変興味深い材料です。我々はDNAを電極間に伸長固定し、単一鎖レベルでの高次構造光電機能の関連を明らかにすることで、分子レベルでのDNA物性の理解を深め、革新的な光電機能を示す次世代分子ネットワークの創製を目指しています。

 本研究室ではこれまでにDNAの誘電伸長固定を行うことで電極間にDNAが単分子レベルで橋渡しさせることが確認され、単一鎖伸長固定が可能となりました。さらに"光をあてると機能する分子""電気が流れる高分子"(導電性高分子)をこのDNA中に高次に配列させ、DNA、光機能性分子、導電性高分子が高次に配列されたナノ組織体を構築しました。この組織体は外部刺激に対する応答など、興味深い電気特性を示します。この中での電気の流れ方や構造の影響を調べています。

電極間伸長光電気機能DNAナノワイヤー

1) Stretching and Immobilization of Photo-electro Functional Nanowires Consisting of DNA and Functional Molecules.  N. Kobayashi, K. Nakamura, Nonlinear Optics, Quantum Optics, 2015, 47, 161.